妥協せず、やり抜くこと

2018/12/10 投稿

 「知財起点と事業者起点」「事業者中心の知財デザイン」のコラムの続編ということで、もう少し。

  前回のコラムで、各地で開催している知財塾について書きましたが、知財塾等のワークショップでの企業訪問や、発表会での企業のプレゼンでいつも心を動かされるのが、日本(場合によっては世界)の技術力を支える中小企業の、妥協することなく、やり抜く姿勢・やり抜く力です。知財関連のワークショップに参加してくださる企業には、尖った個性と、前向きなチャレンジ精神に溢れる企業が多いですが、そうした企業に共通するのがそうした仕事に対する姿勢で、そんなところまで詰めて、こんなに凄いことをやっているのか、と毎回のように驚嘆させられます。

 妥協せず、やり抜く者には、道が開ける。

 最近改めて思うのですが、結局のところ成功への秘訣は、それに尽きるのではないでしょうか。

 妥協せず、やり抜くためには、何が必要か。そうした努力が苦しみとなるようでは決して長続きはせず、その仕事が好きで、楽しめていなければ、その領域に達することはできないはずです。
 そうした領域に達するためには、頭でっかちな計算をして策に溺れるより、目先は割に合わないように思えても、興味を持てること、夢中になれることに覚悟を決めて取り組むことが、結局のところは近道となるのではないでしょうか。
 妥協せず、やり抜いて作り上げたものには、内部から滲み出るような美しさ、表面的なものではない機能美が表れ、それが人の心を動かすことになるからです。ものづくりに限らず、サービス、コンテンツ、何にでも言えることだと思います。

 資本主義経済が土俵である以上、事業環境や競合に目を配り、正しい方向づけをすることはもちろん必要です。しかし、ビジネスといえども細部を辿れば人と人との接点に行き着き、目の前の人をどうやって動かせるかの積み重ねです。
 最近訪問したある中小の部品メーカーは、製品の仕上がりが美しくなるようデザインも重視しているとのことですが、社長さんに「最終製品の内部に収まる部品だから、デザインはあまり関係ないのでは?」と質問したところ、「でも、部品を受け取る当社のお客様は当社の製品を見るのだから、その時にカッコいいと思ってもらえる方がいいじゃないですか」との回答が返ってきました。
 経営者がこうした強い言葉を発せられる企業の将来は、本当に楽しみです。

  もう一つ、やや抽象的になってしまいますが、元気な中小企業、伸びている中小企業には、自らと周囲を二項対立で捉えるのではなく、他者との境界が曖昧で、シームレスなイメージになっている企業が多いように感じます。
 顧客やパートナーとの関係や労使関係が、双方が対峙するのではなく、共生するような方向に向かいながら、全体として、互いが成長していくという感覚です。
 前回のコラムに書いた「事業者中心」の知財デザインでも、こうした共生的なアプローチで考えてみることが必要でしょう。

  周囲と調和して全体が発展するイメージを持ちながら、自らの役割を、妥協せず、やり抜いていく。その中で、各社のオリジナリティである「知的財産」が有効にはたらく方法を考えていきたいものです。